2車線以上ある高速道路などを走っているときに、並走するトラックをよく見ませんか?
追い越したいのに、走行車線・追い越し車線ともにトラックが並んで走っているのを見ると
なんで並走してんだよ!
とイライラしてしまった経験がある人もいるかと思います。
どうか怒らないでやってください。じつはトラックが高速道路で並走するのには理由があるのです。
今回はトラックが高速道路で並走する理由について解説していきます。
多くの高速道路では大型トラックの制限速度は80km/hと定められていますが、本記事ではこういったパターンもあるよという説明ですので、そこについては割愛します。
トラックが高速道路で並走する理由 リミッター
今現在日本で走っている貨物用(緑ナンバー)の大型トラックには、リミッターの装着が義務付けられています。
このリミッターが作動することで、すべての大型トラックはどんなにアクセルを踏み込んでも90km/h程度しか出ないように設定されているのです。
大型トラック(緑ナンバー)にはリミッターの装着が義務化されている
そのため一気に抜きたくても、並走するカタチでちょっとずつしか追い抜くことしかできません。
リミッターが作動するならそもそも同じスピードになるのでは?
続いてこの疑問にお答えします。
リミッターが制限するもの
大型トラックに装着されるリミッターは、スピードを制限しているわけではありません。
リミッターが制限するものは「エンジンの回転数」です。
一定の回転数に達すると、それ以上にエンジン出力が上がらないため、結果的にスピードが制限されます。このときの速度がだいたい90km/h
リミッターはエンジンの回転数を制限する
これは大型トラックが並走する理由をいくつか挙げるうえで前提として知っておく必要があります。
トラックが高速道路で並走する理由 積荷状況
大型トラックの荷台は、軽いものを積んでいたり重量物を積んでいたり様々です。
場合によっては荷物を引き取りに行くため、荷台に何も載せてないいわゆる空車のときもあります。
リミッターが作動することにより同じ「エンジン回転数」で走行した場合、
10t(10,000kg)の積荷がある大型トラックと空車のトラックでは速度が1〜5km/hほど異なります。
積荷が10tのトラック・空車のトラックが同じ「エンジン回転数」で走行すると
1〜2km/h速度差が生じる
すると、いずれは早いトラックが遅いトラックに追いついてしまい追い抜くことになるのですが、この1~2km/hの差が原因で周りからは並走してるように見えてしまうのです。
リミッターが義務化されているのは大型トラックだけ。
4tトラックはリミッターが付いていない。
トラックが高速道路で並走する理由 会社の制限速度
リミッターで90km/h程度しか出ないことはわかったが、80km/h前後で並走しているトラックはどうなの?
実際の高速道路では乗用車がストレスを感じてしまうほどゆっくり並走するトラックも少なくありません。
特に80km/h以下ともなるとかなり遅く感じることでしょう。
80km/h以下でトラックが並走する理由は、会社が定めた制限速度で走っている場合がほとんどです。
運送業界では、燃費を抑えるために独自の制限速度をルール化している会社も珍しくありません。ただ制限する速度は会社によって異なるため、
- A社の制限速度 75km/h
- B社の制限速度 80km/h
このようなケースが発生します。
5km/h程度の速度差では高速道路を運転する周囲のドライバーからは並走しているように見えてしまうんです。
このことが80km/h前後で並走するトラックが発生する理由となります。
トラックが高速道路で並走する理由 例外もあります
高速道路を頻繁に走る人であれば、
100km/h以上で走る大型トラック見たことがある人もいるのではないでしょうか。
大型トラックが100km/hを超えるスピードを出せるのには、次の3つが考えられます。
- 下り坂
- 白ナンバー
- 違法改造
それぞれ解説していきます。
例外① 下り坂
リミッターが作動しエンジン回転数が抑えられると、重量物を積んだトラックは登り坂で極端に遅くなります。
逆に下り坂になるとエンジンの回転数が関係なくなり、重力によってスピードが増すのです。
当然下り坂では積荷の重量が重いほどスピードがついてしまいます。
このときトラック運転手の大半は、ブレーキを使って危険のない速度まで減速するのですが…
一部のトラック運転手は下り坂を利用し、平坦な道では出すことのできない速度まで加速させることも珍しくありません。
下り坂で減速しなければ大型トラックでも100㎞/h以上出る場合がある
非常に危険な運転ではあるものの、未だに切羽詰まった時間での運行を強いられる運転手もいるため複雑なところです。
話しは少しそれましたが、これが大型トラックでありながら100km/hを超えるスピードを出している理由のひとつです。
例外② 白ナンバー
大型トラックのナンバーには次のふたつが存在します。
- 緑ナンバー(営業車)
- 白ナンバー(自家用車)
大型トラックのほとんどが緑ナンバーであり、荷物を運搬することで賃金を受け取る貨物運送業がこれにあたります。
リミッターは緑ナンバーに対してのみ装着の義務があります。
個人で所有する大型トラックや、法人所有でも自社の荷物しか運搬しない白ナンバーの大型トラックはリミッターの装着がされていません。
- 個人所有の大型トラック
- 自社の荷物のみを運ぶ大型トラック
リミッターが付いていないので100㎞/h以上の速度を出すことは可能な、例外の大型トラックとなります。
例外③ 違法改造車
平坦な道かつ緑ナンバーであるのにも関わらず、100㎞/h以上の速度で走っている大型トラックがいるとしたら、違法改造車である可能性が高いです。
最近ではあまり見なくなりましたが、リミッターを非合法に解除する方法は存在します。
リミッター解除しスピードを出せるようにすれば、荷物の運搬回数が増えるため売上を上げることができます。
ごく一部のブラック運送会社では、未だにこのような改造を施しているのだとか…
トラックが高速道路で並走する理由 まとめ
トラックが高速道路で並走する理由をまとめると
- 大型トラック(緑ナンバー)にはリミッターの装着が義務化されている
- リミッターは「エンジン回転数」を制限する
- 積荷の有無で1〜5km/hほど速度差がでる
- 会社が定めた制限速度で走っている
一方でリミッターの影響を受けない例外的なトラックは次のことが考えられます。
- 下り坂で減速しない
- 白ナンバートラック
- 非合法なやり方でリミッターを解除している
ここまでを読んでもらえれば、トラックが高速道路で並走する理由がご理解いただけたかと思います。
抜かれる立場のトラック運転手が気の利く人であれば、追い抜きがしやすい様に減速することもあります。
しかし時間に追われるトラック運転手も多いため全員がその余裕を持つことは難しく、並走というカタチになってしまうようです。
遅いトラックが並走するのは、事故を未然に防ぐためのリミッターによるものだと知っていただき、イライラを少しでも解消してもらえると幸いです。
決して悪気があって並走しているわけではありません。
日本の物流を支えるため昼夜問わず働くトラック運転手を、どうか温かい目で見守ってやってください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。